【ヤクザとしての覚悟】やられてもいいのだ、向かっていけば…その根性が男の価値であり認められる人格となる《「塀の中」懲役合計21年2カ月》
シャバとシャブと地獄の釜Vol.09
◼︎この野郎! 舐めんじゃねえぞ!
この件が尾を引いて、釧路の元不良の大林が、今度はボクの厄マチを切っているという噂を聞いた ボクは、計算夫の政ヤンに、「あの野郎がオレの〝厄マチを切って〟いるらしいんで、明日〝飛ぶ〟(喧嘩する・ぶん殴る) よ」と告げて、その日、部屋へ帰ると、荷物を袋の中へまとめて、上がって行く用意をした。
「サカハラさん、できたら我慢してください。寂しくなりますから……」
翌朝、配食にきた政ヤンがボクのまとめて置いてある私物棚の袋を見て、そう言った。
出役して行き、検身場で大林をやるつもりでいたボクは、チャンスがなかったので、仕事中にチャ ンスを見つけて決行しようとして虎視眈々とそのチャンスを狙っていた。
担当のオヤジが交代したのを見計らうと、ボクは大林のいる作業場へ、仕事の振りをして歩いて行 った。
溶接の作業をする相手はヘルメットを被っているので、どうやって踏んづけようかと考えながら、 ボクは静かにボルテージを上げてゆく。
工場の中央路に来ると、突然誰かがボクの目の前を駆け抜けていった。その懲役が二班の作業場へ 突っ込んで行くと、誰だかわからない懲役に飛びかかっていった。
「この野郎! 舐めんじゃねえぞ!」
ガシャン! ガタン!
音を上げて、二班の作業場はあっという間に修羅場と化してしまった。
ボクはまさかと思いながら、先を越されてしまったことでどっ白けとなってしまい、先ほどの闘志も萎えてしまった。そうこうするうちに警備隊員や看守たちが大勢駆けつけて来て、二人は連れて行かれた。
ボクが飛ぼうとした大林は、その日、ボクの機嫌を取るようにして媚を売ってきた。ボクは「やる価値なし」と判断してやめてしまった。
計算夫の政ヤンが、大林に何か言ったのかもしれなかった。
誰だって、つまらない人間関係の軋轢(あつれき)で懲罰なんかにかかりたくはないのだ。以来、大林はボクと顔を 合わせると、ニコニコしてスマイルピースのマーク顔になるのだった。
(『ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜つづく)
【参考資料】
じんさん、大ヒット曲『異邦人』のシンガーソングライター久米小百合さんの(久保田早紀さん)の番組「本の旅」に出演いたしました。
https://www.youtube.com/watch?v=TSFueav0fgk&list=PLYamdtAmvO0aI-IuOqr107YxdCC1pfzKx&index=3
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。